「あのこは貴族」を読みました

今回は山内マリコさん著 『あのこは貴族』を読みました。

少し前に同じく山内マリコさんの著書『選んだ孤独はよい孤独』を読んでみて、気持ちを言語化するときのワードチョイスが好きで、こちらの本も読んでみました。

こちらの本はハードカバー版だと、ドレスを着ていかにも貴族の女性がうさぎの耳を掴んで持ち上げている絵なんです。しかもその女性の横顔が意地悪そうに・・・

文庫本ではつばの大きな帽子をかぶった女性の絵なんですけど、うさぎの耳を捕まえている絵の意味が内容を読み終わった今でもピンとこなかったです。

主人公は、すごく裕福な家庭の20代女性の話で、年末年始には毎年家族全員で帝国ホテルに連泊して新年を迎える。移動はもちろんタクシー、はたから見ると恵まれた家庭の子でまさに貴族。

そんな貴族の子が義理の兄の紹介で出会った結婚相手は、教科書に出てくるような幕末の成功者の末裔で、親戚には政治家もいるような家柄の男性。

主人公の華子は結婚相手の家柄や彼自身が持つ薄情さに不安を感じている・・・

一方で、田舎から出てきた漁村生まれの女性は、華子や結婚相手の貴族っぷりを当たり前に見せつけられて、東京生まれ、東京生まれの人にとっての当たり前、貴族にとっての当たり前が、これまで自分が生きてきた当たり前と全く違くことに気が付いて、傷ついて、恥ずかしくて、見えない壁を感じる。

華子の結婚相手探しのストーリーを軸に、20代後半になって結婚に焦る女性の心境や、既婚か未婚かで女性の友情の変化をリアルに描かれていました。

少し前にオーディブルで聞いた、辻村深月さん著 『傲慢と善良』でも結婚に焦る女性が描かれていて、晩婚晩婚と言われていても、やっぱり焦る人は焦るんだなあ。と前回も今回も他人事のように感じながら読んでいました。

私自身は30を過ぎてから結婚したのですが、20代後半のころそんなに焦っていなかったように思います。彼氏が居てもいなくても、焦ったからって言って結婚できるわけじゃないしね~とおもっていました。なので私よりも周りの人から心配されるほどでしたね・・・

20代で結婚したいという気持ちが薄かったからなのか、子供が欲しいという気持ちが薄かったからなのか、別に20代じゃなくてもいいじゃんって思っていました。

むしろ年齢としての、30という数字が嫌で何かと20代のうちに楽しんでおきたいとか、20代にしかできないファッションとかを考えていたように思います。

たぶん焦るタイプの女性に映る私は、『のんきな奴』とか『すでに結婚をあきらめている人』に見えたんじゃないかな。

にしても、本当に本当のお金持ち、貴族って結局は一般人から見ると世間知らずでずれている人なのに、当の本人たちにとっての当たり前が、世の中の当たり前だと思って疑わないし、付き合いのある周囲の人も同族の人たちだからそれに気が付かない。

田舎生まれの当たり前はその人たちにとってはそれが当たり前だけど、でもそこに息苦しさを感じて飛び出す人もいて、そんな人は違ったの価値観に触れられるけど、そうではない限りは結局は狭い狭い閉鎖的なコミュニティの中で生きるんだろうな。貴族生まれも地方生まれも。

なので今自分のいる環境に違和感を感じたり、これまでの生き方を振り返って疑問に思ったら、まったく知らない世界に飛び込んでみると、元居た場所がどんな場所だったのか、自分の好きとか得意とかそういうのが見えるのかもしれないな、と思いました。

おしまい

タイトルとURLをコピーしました